無垢と傍若無人

ずっと以前、10才年上の男と付き合っていた。男は結婚していたらしいが、知り合った頃は知らなかった。本当の名前すら知らず、恋愛感情もなく、関係は始まった。男はうちに入り浸るようになった。男の妻からすれば、私はとんでもない女だ。しかし、私は男が勝手にきたのだからと、男の妻に申し訳ないと思うことはなかった。当時2つ年上の同僚の女から「悪いと思わないのか」と言われたが、本当にその時は思わなかったのだ。私は世間知らずの間抜けな無垢な女だった。
数年後、9才年下の男と付き合って、今度は私が「男の妻」となった。私は女を殺したいほど憎んだ。男と女の傍若無人厚顔無恥を憎んだ。
無垢と馬鹿は紙一重。無垢を盾に傍若無人になると馬鹿だ。
男と女に負わされた傷は一生癒えず、憎しみも決して消えない。
かつて私は「男の妻」にその傷を負わして知らぬふりをしている。因果応報。
傷はずっと残る。